「9.11」5周年に思う | 日月抄ー読書雑感

「9.11」5周年に思う

昨日9月11日はニュヨーク世界貿易センタービルやワシントン郊外の同時多発テロ発生から5年目を迎え数千人が集まって追悼式典が行われたことを今日に新聞は伝えている。特に遺族たちが「昨日のことのように悲しみや痛みを感じる。気持ちはまだあの日にある」という言葉に胸が痛む。

9・11後、テロ撲滅のために米国はまず、タリバンのいいるアフガニスタンを攻め、さらに大量兵器を隠匿、アルカイダと結びつがあるとしてイラクに戦争をしかけた。しかし破壊兵器はでてこず、「ワシントン9日共同」によると米上院情報特別委員会はブッシュ政権が指摘した旧フセイン政権とアルカイダの結びつきを完全否定し、米政権が掲げた「大義」を覆したと報じている。

さらに今日の毎日新聞はこの事件に関連して「米同時テロ:「中東民主化構想」は瓦解の危機に」の題で次のように述べている。

「米同時多発テロから5年の11日、ブッシュ米大統領は「テロとの戦い」の決意を新たにした。しかし、米国が対テロ戦争で撲滅を目指すイスラム武装勢力はアジアと中東の十字路でしぶとく生き残り、米国の軍事行動は住民の反発と過激思想の拡散を招いている。5年前、米の報復攻撃を受けたアフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンは、パキスタンのアフガン国境地域で新たな支配圏を確立しつつある。イラク戦争をきっかけに中東では宗派間対立とテロが激化、ブッシュ政権が掲げる「中東民主化構想」は瓦解の危機に直面している。」



「テロリスト」につくか「自分の方」につくかの二分法の迫り方に誰もテロリストにつくというものはおるまい。しかしそれは「自由を守る」という旗印のもとに、「正義の戦争」(?)を促し、その結果、イラクやアフガニスタンの無辜の民を犠牲にしてしまった。。(アフガニスタン4000名、イラク4万人の民間人死亡)アメリカの著名な言語学者ノーム・チョムスキーは9.11勃発直後、「9.11アメリカに報復する資格がない」という著書を著している。これは雑誌、新聞等で彼が発言したものをまとめたものである。その中に次のような発言がある。

問い お考えではアフガニスタンを攻撃することが「テロに対する戦争」でしょうか?
チョムスキー アフガニスタンを「攻撃すればおそらく大勢の無辜の民が殺されるはずだ。・・・・罪のない民衆がほしいままに殺戮するのはテロリズムであり、テロに対する戦争でない。

問い 平和を取り戻すのに西側世界の市民何ができるのか。
チョムスキー それは市民が何を求めるかで決まる。おなじみのパターンによる暴力の環のエスカレーションを望むなら、米国に呼びかけビンラディンの罠に嵌まり込み無辜の民を大量虐殺すればよい・・・。

9・11後の中東はチョムスキーの危惧が現実のものになってしまった。中東の独裁政権に対するテロ摘発強化は民主化に逆行し、民衆の反米感情に拍車をかけてしまったようだ。

ノーム・チョムスキー著   9・11 アメリカに報復する資格はない。文芸春秋社2001年11月刊