ジダンの頭突き | 日月抄ー読書雑感

ジダンの頭突き

サッカーワールドカップ決勝でのフランスの名プレーヤー、ジダンのイタリアの選手マテラッツィへの突然の頭突きには驚いた。確かに試合中の暴力行為は厳に慎まなければなならない。しかしマテラッツィがジダンに何を言ったのか興味があり海外のサイトを調べてみたらこんな記事を発見した。

family members, in telephone interviews, said they believed the Italian defender Marco Materazzi had called Zidane, the son of Algerian immigrants, a terrorist(家族のメンバーが電話のインタービューに答えてマテラッツィがジダンに「アルジェリア移民の息子、テロリスト」と呼んだと確信している。ニューヨークタイムズ)また「お前の姉は売春婦であった」というサイトもあった。マテラッツィは否定しているが民族差別的言辞をはいたものとおもわれる。

これをいわれてジダン怒るのも無理がないように思われるが、BBCニュースによると、France's Liberation says Zidane's apparently crazy, senseless gesture serves as a brutal wake-up call. (フランスの新聞リベラシオンはジダンは明らかにクレージーでそのセンスのない行動は下品な目覚めのコールとして役にたった)と厳しく批判し、Liberation, now calls for a return down to earthFor a month, France dreamed with Zidane, it added. This morning, she's waking up with Chirac. (今地上に呼び戻された。フランスはこの数ヵ月ジダンと共に夢をみて、今朝シラク(大統領)とともに目が覚めた。)と述べている。

このセンテンスが面白い。これからフランスのエスプリを感じた。河盛好蔵の「エスプリとユーモア」によるとespritには機知の意味であるという。フランスの小話にエスプリにとんだもの多い。例えば有名なパスカルは医者嫌いで、お抱えの医者同士が決闘することを聞いて「あの連中は我々を殺ことだけでは最早満足できないとみえる」といったという。

さてシラクがジダンのミスマッチにもかかわらず、次のように述べている。You are a virtuoso, a genius of world football, you are also a man of heart, of commitment and of conviction. That is why France admires you and loves you.(あなたは世界サッカーの超人天才、心のある、説得力のある行動の持ち主である。これがフランス人があなたを尊敬し愛する理由である。)

リベラシオンはシラクと国民にエスプリをもって皮肉っているのが面白い。

河盛好蔵 エスプリとユーモア   岩波新書1969年6月刊