ジェームズ・ジョイスとブルームズ・デイー | 日月抄ー読書雑感

ジェームズ・ジョイスとブルームズ・デイー

アイルランドの作家ジェームズ・ジョイスの作品「ユリシーズ」にちなんで毎年6月Bloomsdayが開かれている。これは主人公であるブルーム夫妻にちなんで開催されるもので、一昨年ユリシーズ100周年 の記念行事が行われたことをブログにも書いた。

今日のアイルランドのウェブ誌「Ireland on line]の記事によると、Bloomsday events unveiled (ブルームズ・ディーの内容明らかになる)の記事が載っている。

Joyceans are being invited to a traditional Guinness and kidneys breakfast on North Great George’s Street while tours, talks and readings will be held throughout the city centre.

(ツアー、話し合い、読書会などが市センターで開催されいる一方、ジョイスファンは北グレートジョージ街での伝統的なギネス(アイルランド Guinness 社のスタウトビール)と内臓料理の朝食会に(ブルームは好んで獣や鳥の内臓を食べた)招かれる。

ジョイスはアイルランドでは今でも人気があるが、青年期にはアイルランド民族主義に冷淡で、故国を嫌い孤立し、後年、フランスやスイスを転々としながら執筆活動を続けている。しかし、故国への思いはあったようだ。

彼の著作「ダブリンの人々」中に「死せる人々」という作品がある。これは二人の老姉妹が毎年のクリスマスシーズンにダブリンの自宅に知人を呼んでパーティーを開く。二人の古くからの友人たちは、テーブルを囲み四方山話をする内容である。

その中に客の一人が「あんたがあんな新聞(デイリーエクスプレス紙、ロンドンの朝刊新聞でアイルランド民族闘争に反対の立場をとる)に書くなんてあんたがウェスト・ブリトンだとは思わなかった」という会話がある。これはwest Britonのことで、アイルランド併合以後、英国本土人を指してBritonとよび、西方のイギリス人、つまり生粋のアイルランド人でないことから「イギリスかぶれ」を意味しているようだ。

アイルランドは長い間のイギリス支配が続き、故国を嫌ったジョイスも作品では故国に対する思いが強かったらしい。それが「イギリスかぶれ」の言葉になったと思われる。やはり彼はアイルランドの作家である。

ジェ-ムズ・ジョイス著/安藤一郎訳 ダブリン市民  新潮文庫 (改版) 2004年12出版